第十一報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(令和6年(2024年)能登半島地震に伴う海底活断層の上下変位)

地質情報研究部門 佐藤智之・井上卓彦・有元 純
活断層・火山研究部門 岡村行信・大上隆史

 第十報では、2007年7月及び2008年7-8月に取得した能登半島北岸沖のブーマー音波探査断面と、2024年4月に同じ測線でほぼ同じ仕様で取得した探査断面を比較し、新たな断層変位が広範囲に生じていることを明らかにした。

 ここではさらに分析を進めた結果を紹介する。第十報と同様に、2007年7月及び2008年7-8月と、2024年4月に同じ測線に沿って取得したブーマー音波探査断面で認定される断層の下盤側(北西側)では海底の水深が変化していないと仮定し、上盤側(南東側)の海底の深度差(上下変位量)を読み取った。図1は、能登半島北岸断層帯とその南西側の門前断層帯門前沖区間及び海士岬沖東断層の一部に沿った上下変位の分布と量をカラー化して図示したものである。なお、この図には、部分的に1m程度の誤差と、断層活動ではないと推定される変化が含まれている可能性がある。主な特徴は以下の通りである。

  • 門前沖区間(門前断層帯)の東部(NK12-15)では断層に沿って1~2 mの南東側隆起の変位が認められ、最も東側の測線(NK16)では4 m以上の隆起が生じた可能性がある。その南側の海士岬沖東断層でも一部(NK01)で東側隆起の変位があった可能性がある。
  • 猿山沖区間(能登半島北岸断層帯)の南西部(NK17-24)では2 m以上の南東側隆起の変位が断層に沿って生じ、海岸に近い部分では、変位量が4 mを超える場所がある。猿山沖区間東部(NK25-31)では断層に沿った上下変位は顕著ではない。
  • 輪島沖区間(能登半島北岸断層帯)の西部では断層線が3つに分かれ、そのうち北側2列の断層のNK32からNK37では上下変位は顕著ではないが、最も北の断層線は区間東部のNK38からNK44まで連続し、2~4 mの変位が認められる。最も南側の断層線沿い(NK32-39)では、1~3 mの南側隆起の変位が認められる。
  • 輪島沖区間と珠洲沖区間(能登半島北岸断層帯)の境界付近からその東側(NK44-49)では北側に別の2列の南側隆起の断層が出現し、全体として2~4 mの南側隆起の変位が認められる。NK50より東側の珠洲沖区間の断層沿いでは、2~4 mの南東側隆起の変位が認められ、東側で大きくなる傾向がある。

上記の音波探査断面で認められた断層変位の範囲は、海上保安庁から公表された海底地形の隆起域(海上保安庁,2024a,b)とほぼ一致する。

図1 令和6年(2024年)能登半島地震に伴う海底活断層の上下変位

図1 令和6年(2024年)能登半島地震に伴う海底活断層の上下変位
2007年7月及び2008年7-8月と、2024年4月に同じ測線に沿って取得したブーマー音波探査断面で認定される断層の下盤側(北西側)では海底の水深が変化していないと仮定し、上盤側(南東側)の海底の深度差をカラーで示した。区間名とその範囲、測線の番号も示す。また海上保安庁から公表された海底地形の変化量マップ(海上保安庁, 2024a,b)を、NK22付近、NK40-47付近、NK52-56付近に重ねて示している。
赤線は、「日本海側の海域活断層の長期評価―兵庫県北方沖~新潟県上越地方沖―(令和6年8月版)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/jishin/mext_00077.html)の断層線。

引用文献

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター