地質調査総合センター

第6報 2026年熊本地震の地表地震断層調査結果:過去トレンチ調査地点の現況確認

2026年8月13日 開設

活断層・火山研究部門
宮下由香里・大上隆史・宍倉正展

調査の背景と目的

 産総研地質調査総合センターは、平成28年(2016年)熊本地震後に、文部科学省の委託業務として「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査(代表:九州大学)」を分担して実施しました。この中で、日奈久断層帯沿いの合計3か所でトレンチ調査を行い、古地震履歴を明らかにしました1)2)
 2026年熊本地震直後に各機関で実施された現地調査等の速報では、地表地震断層は上記トレンチ調査地点では認められない、もしくはより前面(北西側)に出現しているとの記載が複数ありました。もし過去に実施したトレンチ調査地点が今回の地震でずれ動いていないのであれば、トレンチ調査結果から推定された古地震履歴には見落としがある可能性があり、より前面での古地震調査を実施する必要があります。
 そこで、過去にトレンチ調査を実施した3か所の現況を確認することを目的として、8月5日に緊急現地調査を実施しました。本報告では、その結果概要を紹介します。なお、本報告は、地震調査研究推進本部第434回地震調査委員会に提出した資料に解説を加えたものです(図は一部改変しました)。

調査結果
  • 3地点において、トレンチ調査で断層が確認された場所の直近に地表地震断層が認められました。これは、「トレンチ壁面で観察された断層面と全く同じ面が今回の地震でもずれ動いたかどうかまでは分かりませんが、少なくともトレンチ壁面で観察された断層の地表延長上に近いところに地表地震断層が認められた」ことを意味します。
  • いずれの地点でも、地表地震断層は北西側低下を伴う右横ずれ変位ないし右横ずれに伴って形成されたと考えられる杉型雁行割れ目で特徴づけられます。
  • 断層は2条が並走するあるいは幅を持つ区間が存在します。

 

図1 「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」で実施したトレンチ調査地点位置図 基図は第5報の図1

図1 「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」で実施したトレンチ調査地点位置図
基図は第5報の図1

 

図2 山出トレンチ(甲佐町白旗)の調査結果 左上:地理院地図(写真;https://maps.gsi.go.jp/;以下同様)に写真撮影位置・方向を示した。左下:2016年度にトレンチ調査を行った際の平面測量図。右上:2016年熊本地震直後に撮影した写真(亀高正男氏撮影)。田んぼに杉型雁行割れ目が見られ、左手側(北西側)に水が溜まっていることから、こちら側が低下したことが分かる。右下:2026年に同じ方向に撮影した写真。人物の足下に地表地震断層が認められた。

図2 山出トレンチ(甲佐町白旗)の調査結果
左上:地理院地図(写真;https://maps.gsi.go.jp/;以下同様)に写真撮影位置・方向を示した。左下:2016年度にトレンチ調査を行った際の平面測量図。
右上:2016年熊本地震直後に撮影した写真(亀高正男氏撮影)。田んぼに杉型雁行割れ目が見られ、左手側(北西側)に水が溜まっていることから、こちら側が低下したことが分かる。
右下:2026年に同じ方向に撮影した写真。人物の足下に地表地震断層が認められた。

 

図3 山出トレンチ(甲佐町白旗)の調査結果(つづき)
左上、左下:図2と同じ。右上:図2右下写真の人物の足下。田んぼの畦が右横ずれ(12 cm)しており、水の溜まり方から北西側が低下(2 cm)していることが分かる。右下:田んぼ東側に隣接する民地の物置の東側および周辺には、多数の北西側低下を示す開口割れ目が認められる。

図3 山出トレンチ(甲佐町白旗)の調査結果(つづき)
左上、左下:図2と同じ。
右上:図2右下写真の人物の足下。田んぼの畦が右横ずれ(12 cm)しており、水の溜まり方から北西側が低下(2 cm)していることが分かる。
右下:田んぼ東側に隣接する民地の物置の東側および周辺には、多数の北西側低下を示す開口割れ目が認められる。

 

図4 南部田トレンチ(宇城市小川町)の調査結果 左上:地理院地図に写真撮影位置・方向を示した。右上:2016年度にトレンチ調査を行った際の平面測量図。左下:トレンチで断層が認められた付近(目視による)では、多数の西側低下の開口割れ目が認められた。右下:トレンチ調査地点から約200 m南東側の守山八幡宮の境内内でも、多数の北西側低下の開口割れ目が認められた。神社の建物の基礎部分は、北西側低下にともなって浮いている。

図4 南部田トレンチ(宇城市小川町)の調査結果
左上:地理院地図に写真撮影位置・方向を示した。右上:2016年度にトレンチ調査を行った際の平面測量図。
左下:トレンチで断層が認められた付近(目視による)では、多数の西側低下の開口割れ目が認められた。
右下:トレンチ調査地点から約200 m南東側の守山八幡宮の境内内でも、多数の北西側低下の開口割れ目が認められた。神社の建物の基礎部分は、北西側低下にともなって浮いている。



図5 川田町西トレンチ(八代市)の調査結果 左上:地理院地図に写真撮影位置・方向を示した。右上:2017年度および2018年度にトレンチ調査を行った際の平面測量図。左下、中下、右下:いずれも北西側低下を示す杉型雁行割れ目。写真①の雁行割れ目群と写真②〜写真③の雁行割れ目群は、各々がさらに大きなスケールの雁行割れ目状に分布している(左上図の赤破線)。

図5 川田町西トレンチ(八代市)の調査結果
左上:地理院地図に写真撮影位置・方向を示した。
右上:2017年度および2018年度にトレンチ調査を行った際の平面測量図。
左下、中下、右下:いずれも北西側低下を示す杉型雁行割れ目。
写真①の雁行割れ目群と写真②〜写真③の雁行割れ目群は、各々がさらに大きなスケールの雁行割れ目状に分布している(左上図の赤破線)。

文献

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター

災害と緊急調査