2025年度第2回 地質調査研修終了報告
島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸)を中心に、10月27日(月)〜10月31日(金)の4泊5日の日程で地質調査研修を実施しました。講師は産総研地質調査総合センターの利光誠一が務め、羽地俊樹がこれを補佐して研修を進めました。対面研修期間中のサポートとして、GSJ研修事務局の持丸華子も参加しました。
今回の研修は、地質調査について経験のある方を対象とした募集で、参加者は地質調査関連企業や大学等からの5名でした。うち3名は、本研修プログラムの初心者向けの回(2024〜2025年度の第1回)の参加経験者でした。調査実習の対象地域の地質は、日本海拡大期の海底に堆積した泥岩・火砕岩など(前期–中期中新世の成相寺層)と日本海拡大直後に堆積した砂岩泥岩互層(中期中新世の牛切層)、そして牛切層に貫入した中期–後期中新世の火成岩体です。研修期間中は連日、昼間に野外での地質調査を行い、夜間に3時間ほどかけて講義(地質図作成のための基本的事項)と実習(各自の調査データの整理および地質図作成)を行いました。
出雲市での対面研修の前に、e-ラーニングでのビデオ視聴などの事前学習をしていただきました。ビデオ視聴が終わった方には、事前課題を出題して解いていただきました。そして対面研修の前週にリモートレクチャーを行い、事前課題の解法を説明しました。
[研修概要]
- 10月27日:
- 小伊津海岸においてクリノメーターで磁北を測定して偏角の確認。調査実習地の概要説明と地層観察、地層の走向傾斜の測定指導。各自の歩幅の計測。/地質調査の概要の講義(地質調査における観察点と記載方法など)と一般岩石標本セットの観察。
- 10月28日:
- 歩測とクリノメーター使用による簡易的なルートマップ作成の練習。クリノメーターで仰角測定と対象物の高さ推定の実習。砂岩泥岩互層の地質柱状図作成と粒度表を用いた砂岩の粒度観察。砂岩層下底面に見られる流痕の観察と古流向の測定。貫入岩と砂岩層の接触部の観察と分布調査。/地質図学や地質図の読み方やJISに関する講義、一般岩石標本セット観察の続き。
- 10月29日:
- 貫入岩の分布調査、火砕岩の観察と分布調査。水中で堆積した火災流堆積物の観察と追跡調査。/研修3日目までの調査データの整理、地層境界の作図実習と地層境界出現地の予測(翌日の調査計画立案)。地層境界等の作図のための説明。
- 10月30日:
- 泥岩・火砕岩・砂岩、貫入火成岩の分布調査。沢筋での調査と注意点の説明。/調査データの整理と地質図の作成作業。質問を受けながら、地層分布図作成に関わる説明。
- 10月31日:
- 当地域における地質調査研修の理解を深めるための関連地層・岩石などの巡検(火山岩・火砕岩の産状・構造等の観察)。
地質図作成を目的とした4日目までの研修では、概ね天候に恵まれ順調に野外での地質調査の実習が進みました。研修参加者の中には地質調査や地質図作成の経験の少なかった方も含まれていたため、地形図上での位置確認など普段慣れない作業に初めは戸惑う方もおりましたが、研修で経験を重ねながら少しずつ慣れていただけたようです。3日目・4日目夜のデータとりまとめ作業では、e-ラーニングでも視聴した地質図作成工程説明の紙資料を配布して、それを参考にしながら地質図を作成していただきました。短い対面の研修日程の中ではありましたが、参加者は地層境界線をいくつか描けたようです。そこで、研修終了後も自宅などで配布資料を参考にしながら引き続き地質図完成に向けて取り組まれるようお伝えし、地質図作成に関わる作業を終えました。最終日は、あいにく終日雨まじりではありましたが、幸いに予定していたすべての露頭観察をすることができました。
本研修の実施にあたり、島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会の後援をいただき、研修地の地元の方々にも大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
2025年度第2回 地質調査研修
| 日程 | 2025年10月27日(月)- 10月31日(金) |
|---|---|
| 補備日程 | 事前のe-ラーニング(約100分)を受講の上で、上記研修開催日の前週(10月15日〜18日の内の1日)にリモートレクチャー(約20分)を予定 |
| 研修場所 | 島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸) 地質:中期中新世の牛切層の堆積岩など |
| 研修内容 | 最近はルートマップを作成したことがあっても地質図を描いた経験のない方、地層や岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。また、大学等で地質調査や地質図作成の実習経験があっても、しばらく本格的な調査から遠ざかっていた方もいらっしゃいます。この研修では、地層・岩石の観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための基本的事項を5日間の野外実習と座学・室内作業で習得します。少人数でマンツーマンに近い形での研修となります。 ※今回は、大学・会社等で地質図を1回くらいは作成したことのある経験者向け(初級)の内容で行う予定です。ふるってお申し込み下さい。 ※中級者向け(第3回)は11月を予定しています。 |
| 定員 | 定員 6名(最小催行人数:4名) |
| 講師 | 利光誠一博士 地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。 他1名 |
| 集合 | ホテル(出雲市駅前) 10/27 13時 |
| 解散 | ホテル(出雲市駅前) 10/31 16時 |
| CPD | 42単位(事前のe-ラーニング等と合わせて42単位になるよう、時間を調整して指導を行います) |
| 参加費 | 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に84口(1口1000円)の会費が必要です。 |
| 注意事項 | 現地までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。朝食付き9000円弱(税込)/1泊の宿を予定しています。 参加には傷害保険等への加入をお願いします。お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。 学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。 ※研修直前に体調不良となった方で、感染症などへの感染の疑いのある場合には、参加をご遠慮いただくこともあります。 |
| 申込み方法 | 下記項目を記載したメールを事務局宛にお送りください。
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| 申し込み・ 問い合わせ |
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。 |
| 主催 | 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則(pdf:76KB) |
| 後援 | 島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会 |






