2020年度第2回地質調査研修終了報告

 島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸)において、10月26日〜10月30日の4泊5日の日程で地質調査研修を実施しました。講師は産総研の利光誠一が務め、荒岡大輔がこれを補佐して研修を進めました。
 参加者は5名で、地質調査について少し経験のある方が対象でした。調査実習の対象地域の地質は、日本海拡大期に堆積した泥岩・火砕岩など(前期–中期中新世の成相寺層)と日本海拡大直後に堆積した砂岩泥岩互層(中期中新世の牛切層)、そして牛切層に貫入した後期中新世–前期鮮新世の火成岩体です。研修期間中は連日、昼間に野外での地質調査を行い、夜間に3時間程度の座学で地質図を作成するための一連の基本的事項の講義を行い、あわせて各自の調査データの整理と地質図作成実習を行いました。

[研修概要]

10月26日:
小伊津海岸において実習地の概要説明後、地層の走向傾斜の測定指導。/ 地質調査の概要講義と粒度表作成実習。
10月27日:
歩測とルートマップ作成の初歩、砂岩泥岩互層の地質柱状図作成と貫入岩の分布調査指導、岩石標本の観察。/ 地質調査における観察点と記載方法、地質図の見方に関する講義と、調査データの整理。
10月28日:
貫入岩転石などの分布調査と注意点、クリノメーターを用いた崖(露頭)の高さの測定実習、火砕岩の観察と分布の追跡などの指導。/ 調査データの整理と地層境界等の作図実習。
10月29日:
地層の走向傾斜測定応用編の指導、泥岩・火砕岩・砂礫岩の分布調査指導、沢筋での調査と注意点の指導。/ 貫入火成岩体・火砕岩・砂礫岩・泥岩等の地層分布図作成に関わる講義と地質図の作成指導。
10月30日:
当地域における地質調査研修の理解を深めるための関連地層・岩石などの巡検(堆積岩の岩相・構造などの観察、火成岩・火砕岩の産状・構造等の観察)。

 学生時代に授業で地質調査の仕方を習った方が対象ではありましたが、本格的な地質調査とまではいかなかったという方が大半でしたので、地質調査で必要な露頭位置の確認や岩相の識別などの基礎的なところから実習しました。研修で一通りの調査経験を積みながら、地質図作成に取り組みました。自分で得た調査データから地質図にしていくため、まとめの段階で現場での記録のとり方の不備に気づいたり、地層境界をつないでいく作図方法で戸惑うなど、自然を相手にする難しさもあり、皆さん苦戦されていました。研修期間中に部分的な地質図(いくつかの地層境界線を引いた図)作成まではたどり着きましたが、調査地域全体の“地質図”(岩相分布図)が未完成の方もいましたので、研修終了後に説明資料を配布するなどのフォローアップも行いました。
 研修に参加された皆さんには、全体を通して地質調査や地質図の作成がどのようにして行われているかを野外調査の現場でご理解いただけたことと思います。あわせて、さらに今後の修練が必要なことも実感いただいたと思います。
 本研修の実施にあたり、小伊津自治会、三津自治会の方々に大変お世話になりました。地質調査総合センタースタッフおよび地質標本館からの各種助言や教材提供などもいただき、本研修参加者の理解増進に役立てることができました。この場をお借りして御礼申し上げます。

2020年度第2回地質調査研修
2020年度第2回地質調査研修
22020年度第2回地質調査研修
2020年度第2回地質調査研修

2020年度第2回地質調査研修

日程 2020年10月26日(月)-10月30日(金)
研修場所 島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸)
地質:中期中新世の牛切層の堆積岩など
研修内容 最近はルートマップを書いたことがあっても地質図を書いた経験のない方、岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。この研修では、露頭の地層・岩石の観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための一連の基本的事項を5日間の研修で習得します。少人数でマンツーマンに近い形での研修で地質調査技術を学びます。
※今回は,大学・会社等で地質図を1回くらいは書いたことのある経験者向けの内容で行う予定です。ふるってお申し込み下さい。
定員 定員 6名(最小催行人数:4名)募集終了
講師 利光誠一博士
地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。
他1名
集合 ホテル(出雲市駅前) 10/26 13時
解散 ホテル(出雲市駅前) 10/30 16時
CPD 40単位 (40単位になるよう、時間を調整して指導を行います)
参加費 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に60口(1口1000円)の会費が必要です。
注意事項 お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。
現地までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。素泊5000円台(税込)の宿を予定しています。
参加には別途傷害保険をおすすめします。
学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。
新型コロナウイルス感染防止の対策は行いますが、情勢を踏まえ、中止とさせていただく場合もございます。
申し込み・
問い合わせ
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催

産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則(pdf:76KB)

後援

島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会